1641
昼食は私一人で作った。
御厄介になってる身としてこれくらいはしなきゃって思ったからのと、古川さんが料理全くできないからって理由で自然とこうなった。
(料理全く出来ないって、古川さん今までどうやって生きてきたんだろ……)
ピカピカのキッチンで野菜を切りながら、ふと疑問に思う。40過ぎの独身が、料理も出来ずに一人暮らしを今までどうやって暮らしてきたんだろう。
(あー……、でも古川さんならご飯作ってくれる彼女くらいいたよねー)
イケメンで優しいし、その上なんかの会社の社長さんだから、彼女とか尽きなかったかもしれない……。
そう結論が出て、ほんの少しだけチクリと胸の奥に違和感。
(……っ、なにこれ……嫉妬?あたしが?あのおじさんに?)
まさかまさか。
ありえない。
いくらイケメンで優しいからって、古川さんはママよりも年上のおじさんなのに……。
恥ずかしい思考を振り払うように野菜を切り刻む手に力を込める。そうしてザクザクと乱暴に切ったものだから、野菜は少しだけ形が歪になってしまった。
「これ、美味しいね」
「ほんと!?よかったぁー!」
出来上がったカレーを食べて、古川さんが褒めてくれた。
私も一口食べて、カレーの味に大満足。
リクエスト通りのピリッとした辛口に、歪な形をした野菜も程よく溶けてくれて、味も最高に美味しい。
(あたし、天才かも……)
なんて自惚れつつ、ぱくぱくとカレーを頬張った。
「……奈々子ちゃんって、」
ふいに古川さんがカレーを食べるのを止めて、向かいに座る私をじぃっと見つめた。つられて私もスプーンを置く。
「はい?」
「あぁ、いや……良いお嫁さんになるよね」
「なぁ……っ!?」
(このおじさん今なんて言った!?良いお嫁さん!?あたしがっ!?)
古川さんの突然の発言に、かぁっと体が熱くなる。心臓がバクバクしてて、恥ずかしくてたまらない。
「あ。ごめん。こんなおじさんに言われても嬉しくないよね」
私の反応を見て、勘違いしたように古川さんはそう言った。私は緊張してしまってうまく返事が出来なかった……。
(やばいやばい!!!!なにこれなにこれっ!?あたしなんかヘンだよっ!?)
心臓がドキドキして苦しい。
体が熱くてたまらない。
こんなのヘンだ。
こんなの、まるで……
(あたしが古川さんに恋してるみたいじゃんっ!?)