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そうしてなるべく考えないようにして食事の用意をしていると、
ピンポーン。
とチャイムが鳴った。
貴一さん帰って来たのかな?
そう思って玄関のドアを開けると、貴一さんが慌てて飛び込んで来た。
「わっ!?おかえり、貴一さん。どうしたの?そんなに慌てて……って、あれ?手ぶらじゃん!!お米はっ!?」
(おつかいも満足に出来ないのかこの41歳は!!)
手ぶらで戻ってきた貴一さんにそう内心で呆れかけたその時、
「怖い人が来た!!」
貴一さんが叫んだ。
そしてすぐに私を盾にするように貴一さんがしゃがみこんで後ろに隠れる。
「ちょっ、何事?新手のかくれんぼ?ていうか隠れきれてないし!!」
思わずそうツッコミを入れる私。
貴一さんは後からぎゅっと私を抱き締めるみたいに隠れて動かない。
「まったく変な冗談やめてよね……」
そう呟いて溜め息が自然と零れそうになったその時。
ツカツカと足音を立てて、黒スーツの怪しい人たちが玄関先に現れた。
どうやら冗談じゃなかったらしい。
ドアを閉めることも出来ず、びくりと体を強張らせる私。
(やばいやばいやばい!!!なにこれなにこれなにこれ!!!!怖い人ってことはやっぱり、や◯ざ!?それとも借金取り!?あんな馬鹿みたいな外車買うからだよ貴一さんの馬鹿っ!!!!)
私の頭のなかはもうパニックでいっぱいいっぱい。
「……じっ、事情は知りませんが手荒なことはやめてくださいっ!この人、どうしようもない馬鹿だけど、悪い人じゃありません!!」
言いながら両手を広げる。貴一さんを守るように。足は震えてて全然威嚇になってないと思うけど。
けれど、啖呵きった私に対し、先頭の黒スーツのおじさまはぽかん顏だった。
(え、あたし、なにか外した???)