1641



「どうしようもない馬鹿は余計でしょ奈々ちゃん」

後ろでクスクスと貴一さんが笑う。笑ってる場合か!!


その声にはっとしたように、黒スーツのおじさまが声を上げた。

「確保!!」


わーっと私を押し退けてスーツの人が玄関に押し入ってきた。そして抵抗も虚しく、貴一さんはあっさりと捕まってしまったのだった。



「ちょっ、乱暴しないで下さい!あと、近所迷惑だからもう少しお静かに!!」


力では到底勝てそうにないので、せめて口で抵抗してみる。

すると黒スーツのおじさまが、「おい、もう少し静かに」と小声で貴一さんを押さえている部下らしい人たちに指示を出す。

あれ?案外いい人じゃない?




「巻き込んでごめんなさいね」

呆気にとられる私に、同じく黒スーツの綺麗なお姉さんがそう声をかけた。

黒髪の綺麗なボブカットのお姉さん。
美人過ぎて凄い迫力がある。この人も仲間?



「あ、あの……」


この状況はいったい……。
もうわけわかんなくて言葉が出ない。


そんな私にお姉さんはにこりと笑みを浮かべるだけ。



そして、

お姉さんは、がんじがらめにされてる貴一さんにツカツカとヒールを鳴らしながら歩み寄り……




「さ、会社に戻りますよ? 古川社長」


そう言って綺麗に微笑んだ。



< 32 / 257 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop