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おじさんの秘密

■ □ ■ □



「おじさんの名前は古川貴一。そして、彼女の名前は相沢奈々子ちゃん。

ごく普通の二人は、ごく普通の恋をし、ごく普通の結婚をしました。


でも、ただ一つ違っていたのは……

おじさんは社長だったのです!」



「……ごめん、それ元ネタ知らない」


なにかの声真似をしてわざとらしく喋る貴一さん。私はその台詞のネタの意味がわからずそう言い返すことしかできない。

ていうか結婚してないし、

それに、社長って……。



「うわー、今の子には通じないのか。おじさんショック」

ショックと言いながら貴一さんが愉快そうに笑っている。私はというと、笑ってる余裕なんて全くなかった。


怪しいおじさんこと古川貴一さんは、実はどっかの会社の社長様でした。

そんな突拍子も無い話をつきつけられて頭がついていかない。


だってあれ、貴一さんて、ゲームばっかしてるおじさんじゃん。女子高生相手にセクハラしまくるエロおやじじゃん。



「貴一さんて、本当に社長さんなの?」

「うん」


恐る恐る訪ねる私に貴一さんはあっさり頷いた。


私でも聞いたことのある高級ブランドメーカーの食器や陶器を販売している会社だとか。

バブルの時代に会社を立ち上げて、この不況にも負けずメキメキ業績を伸ばしているのだとか……。




「人の上に立つより、人の下で働いた方が気楽でしょ?だから気分転換にアルバイトしてるんだー」

と、あのコーヒーショップでのアルバイトのことを説明する貴一さん。



「……それはわかりましたけど、この状況の意味がよくわかりません」



そう言って今の状況を省みる。

私はなぜか貴一さんの膝の上に小さい子どもみたいにして座らされているのだ。そして後ろから貴一さんが抱きつくようにしてお腹に手を回してくる。


で、その両隣には先ほどの黒スーツのおじさまとお兄さんの二人。

しかもここは車の中。

後ろの席に三人プラス私が座り、前の運転席ではお姉さんはかっこよくハンドルを握っている。



「えー、奈々ちゃんと離れたくないんだよー」

肩に顎を乗せながら貴一さんが言う。ついでにぎゅーっと抱き締められる。




(あー!もうわけわかんない!!)



とりあえず、お腹周りダイエットしとけばよかった。



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