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悪代官ごっこ
■ □ ■ □
貴一さんの次の誘いは比較的早かった。
誘いが早過ぎてちゃんと働いてるのか心配だったけど、メールの返信は以前よりも遅いので、彼が多忙であることがなんとなくわかる。
私は私でちょうど期末試験があったから、結局会えたのは終業式の金曜日。クリスマスイブの前日だった。
今度こそオムライスかと思ったけど、
「期末試験後で疲れてるでしょ。今日はご馳走するよ」と貴一さんが言うので、オムライスはまた今度になった。
連れていってもらったのはなんだか高級そうな和食屋さん。料亭って言った方がいいのかな?とにかく高そうなところだった。
「寒くなってきたからしゃぶしゃぶでもどうかと思ってね」
「しゃぶしゃぶ……」
せっかくのクリスマス前なんだから、もうちょっと洋食寄りなメニューが良かったのに……なんて、思ってしまうのは私のワガママ。
「それいいね。奈々ちゃんがしゃぶしゃぶって言うとなんかエロい。もう一回言ってみて?」
「〜〜っ、へんたいっ!!」
私がワガママってことを差し引いても、貴一さんは乙女心をわかってくれないおじさんだ。
そうこうして座敷の個室に通されて、向かいあってしゃぶしゃぶのお鍋を突つく。
ぐつぐつに煮えたお湯に、お肉をくぐらせて。タレにつけたお肉を口に含むと、これまで食べたことのない美味しさに驚愕した。
(高級なお肉ってこんなに美味しいの?タレもすごく香りが良いし、これどうやって作るんだろ……)
さっきまでの複雑な乙女心も忘れて、お肉をパクパク。
「美味しい?」
向かいに座る貴一さんが目を細めながら私を見る。
「美味しい!お肉とか、今まで食べたなかで一番ってくらいに美味しい!」
私がそう答えると、貴一さんも嬉しそうに笑う。この笑顔好きだなぁとぼんやりと思う。
「奈々ちゃんに気に入ってもらえたようでなによりです」
「でも、高級過ぎてなんだか援交してる気分だよ」
「それじゃあ、おじさんと本当に援交しちゃいますか?」
なんてことを言って貴一さんがまた私をたらしこもうとする。こんな言葉にまたいちいち顔を赤くする私はとことん学習能力がない。
「……きーちさんのエロおやじ」
「奈々ちゃんが可愛いからだよ」
そうへらっと笑うおじさんの表情も、見惚れるくらい好きだと思うわけで……。
私ってとことん救えない。
貴一さんの次の誘いは比較的早かった。
誘いが早過ぎてちゃんと働いてるのか心配だったけど、メールの返信は以前よりも遅いので、彼が多忙であることがなんとなくわかる。
私は私でちょうど期末試験があったから、結局会えたのは終業式の金曜日。クリスマスイブの前日だった。
今度こそオムライスかと思ったけど、
「期末試験後で疲れてるでしょ。今日はご馳走するよ」と貴一さんが言うので、オムライスはまた今度になった。
連れていってもらったのはなんだか高級そうな和食屋さん。料亭って言った方がいいのかな?とにかく高そうなところだった。
「寒くなってきたからしゃぶしゃぶでもどうかと思ってね」
「しゃぶしゃぶ……」
せっかくのクリスマス前なんだから、もうちょっと洋食寄りなメニューが良かったのに……なんて、思ってしまうのは私のワガママ。
「それいいね。奈々ちゃんがしゃぶしゃぶって言うとなんかエロい。もう一回言ってみて?」
「〜〜っ、へんたいっ!!」
私がワガママってことを差し引いても、貴一さんは乙女心をわかってくれないおじさんだ。
そうこうして座敷の個室に通されて、向かいあってしゃぶしゃぶのお鍋を突つく。
ぐつぐつに煮えたお湯に、お肉をくぐらせて。タレにつけたお肉を口に含むと、これまで食べたことのない美味しさに驚愕した。
(高級なお肉ってこんなに美味しいの?タレもすごく香りが良いし、これどうやって作るんだろ……)
さっきまでの複雑な乙女心も忘れて、お肉をパクパク。
「美味しい?」
向かいに座る貴一さんが目を細めながら私を見る。
「美味しい!お肉とか、今まで食べたなかで一番ってくらいに美味しい!」
私がそう答えると、貴一さんも嬉しそうに笑う。この笑顔好きだなぁとぼんやりと思う。
「奈々ちゃんに気に入ってもらえたようでなによりです」
「でも、高級過ぎてなんだか援交してる気分だよ」
「それじゃあ、おじさんと本当に援交しちゃいますか?」
なんてことを言って貴一さんがまた私をたらしこもうとする。こんな言葉にまたいちいち顔を赤くする私はとことん学習能力がない。
「……きーちさんのエロおやじ」
「奈々ちゃんが可愛いからだよ」
そうへらっと笑うおじさんの表情も、見惚れるくらい好きだと思うわけで……。
私ってとことん救えない。