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そうして案内されたは、大宴会場のような広い座敷の部屋だった。部屋も広いけど、そこに居る人たちの数も大勢。
みんな古川家の人間であるというのだから、本当にすごい。
「おー!来たか貴一!!」
「あれが噂の婚約者!?」
「可愛いー!」
「現役女子高生だっけ?」
「犯罪じゃん貴一」
「羨ましいっ!!」
「いやぁ貴一坊っちゃんもとうとう結婚かぁ」
「めでてぇなぁ!!よぉし呑むぞ!!酒だ!酒!!どんどん酒持ってこい!!」
襖を開ければ次々にあちこちから飛んでくる声。貴一さんはそれをへらりと笑ってかわしながら私を紹介する。
「相沢奈々子ちゃん。僕の婚約者ね」
「相沢奈々子です。よろしくお願い申し上げます」
頭を下げると、あちこちから「よろしくー」と声が上がる。みなさんの気さくなその声と和気あいあいな雰囲気にほっとなる。
どうやら想像していた御家騒動のドロドロ感はなさそうだ。
「さ、二人とも座って。乾杯しましょう」
藤子さんの声に促されて空いてる席に貴一さんと並んで腰を降ろした。
「はい、奈々ちゃんは烏龍茶ね」
「あ、ありがとうございます」
貴一さんに烏龍茶の入ったグラスを渡される。貴一さんのその反対側の手はいつの間にかビールの入ったグラスを持っていた。
(貴一さん、お酒飲むんだ……)
なんだか意外。
そういえば貴一さんとメシ友してたけど、貴一さんがお酒飲むのって見たことない。
(今まであたしが未成年だから気を遣ってくれてたのかな……)
そんなことを頭の隅で考えながら、みなさんと乾杯する。
いくつも並べられた長テーブルには様々な料理やおつまみが乗っていて、みなさん思い思いに飲んだり食べたりしている。
私は初めてのその雰囲気に、ただただ圧倒されるばかりだった。
「奈々子ちゃんてまだ女子高生なんだよねー?年は?高校何年?」
ふいに隣に座っていた綺麗な女の人に話しかけられる。びっくりして貴一さんの方を振り返ると「父さんの妹の子で、従兄弟の直美」と教えてくれた。
「16歳です。高校1年です」
そう直美さんに答えると、直美んも含めて周りのみなさんが次々に「若いね〜」と騒ぎ出した。
「うちの子と歳変わらないじゃない」
直美さんが呆れたように貴一さんに向かって言う。すると直美の隣からひょこっと顔を出す女の子。
「貴一おじさんそのうち捕まるんじゃないのー」
私と同い年くらいのその子は、貴一さんに向かってケラケラ笑いながらそう言う。
「酷いなー、もう。縁起でもないこと言わないで」
貴一さんがへらっと笑いながらその子に答える。そして「大丈夫だよね?奈々ちゃん」と私に話を振る。
そんな貴一さんに私は苦笑い。
だって、私も前に同じ事思ったことあるから。
「奈々子ちゃんもそう思うってー!」
私の反応にその子は、元気良くそう声を上げる。周りからどっ沸く笑い声。