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「んんっ……」
ギシッとベットが軋む。
押し倒された状態のまま、貴一さんが何度も何度も私にキスをするから。
頭の奥がくらくらしちゃう。
ここは貴一さんの実家で、親戚の人もいっぱい居るのに。そんな状況なのに、私は貴一さんのキスを拒みきれなくて、むしろ気持ちいいとさえ感じてしまって……。
「……ぁっ、はぁっ」
「奈々ちゃん、誘ってるの?」
「さっ、誘ってなんてっ」
ない。
そう言おうとするものの、それも貴一さんのキスがまた降ってきたせいで言葉が途絶えてしまう。
どうしよう、このままじゃ本当に最後まで流されてしまいそう……。
ギシッ。
もう一度ベットが軋む。
すると、軋むベットの振動のせいで、ベットの横でがさりと音を立てて何かが倒れた。
貴一さんが反射的に唇を離した。
惚ける頭で私もそちらに目を向けると、見覚えのある紙袋が横に倒れていた。
(なんだっけ……そうだ……あれ、お土産持ってきてたんだっけ。
貴一さんの部屋に置きっ放しにしてて、お渡すのをすっかり忘れてたけど……)
来る時に持ってきていたお土産。
挨拶の時は緊張してて渡しそびれたんだっけ。
そうだ。お土産渡さないと。
「きいちさん」
「ん?」
「お土産、渡しに行かなきゃ……」
「後でいいよ」
「やだ、だめ」
生ものってわけじゃないけど、それでもせっかくママと百貨店まで行って選んだお土産なんだもん。
貴一さんの再びのキスを拒むと、貴一さんからは不満そうな表情。
「……奈々ちゃんの小悪魔」
「こあくま?」
(なに言ってんの、このおじさん……?)
貴一さんの不服そうな呟きはさておき、私は貴一さんを押しのけて起き上がる。
ベットか降りようとした時、貴一さんが私を後ろから抱き締めた。ついでにむにっとおっぱい触られたけど、その手を無言でぺしっと叩いて跳ね除ける。
そこまですると貴一さんも諦めた様で、溜息をついてベットから降りた。
「ほら、戻ろうよ。きーちさん」
「敵わないなぁ、奈々ちゃんには」
倒れたお土産を拾い上げ、私は貴一さんの手を引いて部屋を出る。
最後まで流されずにすんで、内心ではほっ溜息をひとつ零した。