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ガラッと部屋の戸が開けられる。
「あ、婚約者ちゃん寝てるみたいだね」
「静かにしろよ」
二人が部屋に入ってきて、私はぎゅっと目を瞑る。
「ほら、芋でいいんだっけ?」
「うん。さすが貴一君」
「それ持ってとっとと帰ってね」
「うん、ありがとう」
たぷんと、水音が聞こえた。
話の流れ的に、"那由多さんが芋焼酎を貰いに貴一さんのとこに来た"ってところかな……。
言われた通り那由多さんは用が済むと、たぷんたぷんと瓶を鳴らしながらさっさと部屋から出て行ってしまった。
部屋はしんと静まり返る。
もう今夜はこのまま寝てしまおう。
お布団の中で、私はなるべく『松嶋やよい』のことを考えないようにして目を硬く瞑る。ついでに体もぎゅっと縮こまらせて。
(あぁ、一年の最後になんでこんな惨めな気持ちにならなきゃいけないの……。
もぅ……、きーちさんの、ばーか、ばーか、ばーっかっ!)
心の中で貴一さんに向けてバカを連呼していると、貴一さんが「くしゅんっ」とくしゃみした。
噂話って心の中でしてても本人に伝わるのかな……。
そんなことを考えていると、ふわりとお布団の上に何か乗せらた。
それが何かはわからないけど、布団はさっきより確かに重くなっているのを感じる。
なんだろう。目瞑ってるし、布団かぶってるから、その重さの正体がさっぱりわかわからない……。
考え込んでいると、そっと電気を消された。
(あ、貴一さんも寝るのかな……)