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電気が消されて数分……
もしくは、数十分。
私はまだ眠れる気配がない。
このままだと朝まで一睡も出来ないんじゃないかと思えてきて気が遠くなる。
(貴一さんは寝たのかな……)
気になって、貴一さんが寝ていベットの方へ意識を集中させてみる。
寝息らしいものはまだ聞こえない。
その代わり、「くしゅんっ」とまたくしゃみが聞えた。
これも私の噂のせい?
それとも、今夜は寒いからかな……。
「くしゅんっ」
またくしゃみ。
これで三度目。
(大丈夫かな貴一さん……)
ばれないようにこっそり布団から顔を覗かせる。すると、薄暗のなか微かに見えたのは毛布一枚で寝ている貴一さんだった。
なんで毛布一枚?
だって、貴一さんのベットちゃんと掛け布団もあったのに。
(……まさかっ!?)
反射的に私は起き上がっていた。
寝たふりも忘れて。
(やっぱり貴一さんの掛け布団……)
起き上がって見てみると、思ったとおり。
私の布団の上にさらに貴一さんの布団まで掛けてあった。そりゃ寒いはずだよ。
「……ん、ななちゃん?起きてたの?」
少し掠れた声で貴一さんがひっそりと口を開く。
「起きたの!貴一さんのくしゃみで!
なんで私に布団が二枚も掛かってるの!?」
「ごめんね……。奈々ちゃんが寒いといけないから」
そう言って貴一さんがいつものようにへらりと笑ったのを感じた。
私はすくっと起き上がり部屋の明かりを点ける。案の定貴一さんはへらっと笑っていた。
「貴一さんちの羽毛布団、超あったかいのでお構いなく!」
そう言って貴一さんのベットに布団を強引に押し返す。
「バカじゃないの!?こんなの、貴一さんが風邪引いちゃうじゃんっ!!」
「えー、平気だよ」
「自分の歳自覚してください!」
「あ、それ結構キツイ」
そう言って貴一さんがまた笑う。こっちは結構本気で怒ってるのになにがそんなに可笑しいのか。
「ていうか髪もっ!全然乾かしてないじゃん!本当に風邪引きますよ!?」
「えー、いいよめんどくさい」
「もうっ、だったら拭いてあげますから」
言いながら、私は自分のタオルを引っ掴んで貴一さんのベットの上にあがった。