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簡単に身支度を整えて、貴一さんと広間へ向かう。障子の戸を開けると、昨日の宴会の時の半分も人は居なかった。
貴一さん曰く、お酒を呑んでいた男性陣はほぼ酔いつぶれて夕方まで起きてこないとか。古川家では毎年のことらしい。
朝ごはんとお雑煮を食べて、貴一さんのお父さんに新年のご挨拶をする。
本家の当主に挨拶をするというのも古川家では毎年のことらしい。
貴一さんのお父さん…古川隆雅さんは、お正月だからといって他の方みたいにお酒を呑んだり騒いだりしていなくて眉間に皺寄せてむっつり黙ったまま。
ご挨拶するのもこれまた緊張した。
挨拶が済むと貴一さんと一緒に初詣に出掛けた。近所にある小さな神社で、お正月こともあって人が多かった。
「これからどうする?奈々ちゃんどっか行ってみたいとこある?」
初詣の帰り、貴一さんがそう尋ねた。
「ううん、別にいいけど……。ていうか、まっすぐ帰らなくていいの?」
私はそう首を横に振る。
だって、私が知らないだけで古川家にまだ行事が残ってるかもしれないと思ったから。一家総出で餅つきとか、かるた大会とか、大家族の古川家ならあり得そう……。
「ないない。みんな初詣から戻ったらテレビ見てごろごろしてるよ毎年」
「えっ、そうなんだ」
なんだか意外で驚いた。
「奈々ちゃんは?日本ではお正月どうやって過ごしてるの?」
「うちも同じだよ」
海外で年越しバカンスして、日本に帰ってくればママとふたりで録画したガキ使見ながらリビングでごろごろしてる。
そう話すと、貴一さんとのこれからの予定が決まった。
お家に帰ってごろごろしよう。