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我ながら色気ないなと思いつつも、貴一さんとこたつに入ってごろごろ。

お正月特番のチャンネルを回しながらぐだぐだして、貴一さんとお喋りしたり友達から届いたあけおめメールに返信したりしながらお昼までの時間を過ごした。



「ヤッシーっ!!あけおめぇっ!!」


ちょうど昼の12時になった頃。
大音量な和美ちゃんの声が玄関先から聞えてきた。



「八嶋、来たみたいだね」

やれやれと言う風に貴一さんが腰を上げる。思わず私も一緒に立ち上がり、貴一さんの後を追う。

玄関口では、貴一さんの部下八嶋さんと、八嶋さんにくっついて離れない和美ちゃんの姿があった。


「こーら。和美、離れなさい」

「ちぇー」

貴一さんが和美ちゃんを八嶋さんから引き離すと、和美ちゃんからは不服そうな声。こういう反応は貴一さんと似ててちょっと面白い。



「社長、明けましておめでとうございます」

「はい。おめでとう。ほら、上がって上がって」


礼儀正しく礼をする八嶋さんを迎える。

すると、


「お嬢さんも。あけましておめでとうございます」

「へっ!?」

八嶋さんが私にまできちっと頭を下げるからびっくり。



「ヤッシーね、まだ奈々子ちゃんのこと貴一おじさんの娘だと思ってるんだよ」

と、和美ちゃんがにまにましながらこっそり教えてくれた。「面白いからこのまま黙っておくの」と悪戯に笑って。

こういうところも貴一さん似だ。

古川家のDNAには、人をおちょくれとでも刻み込まれているのだろうか……。





なにはともあれ。
八嶋さんも迎えてのお正月。

八嶋さんも地元はこっちらしく、古川家と繋がりの深いお家柄らしい。
お正月には毎年こうして古川家と縁のある人々がここに訪れるのだと、貴一さんが教えてくれた。


「……てことは、まさか高坂さんも?」

「ああ、高坂も同じ地元だよ。近所だし」


まさかと思って聞いてみると、案の定だ

そして、高坂さんの地元もこちらということは……



「歩美ちゃん来たよー!!男連れで!!」


(やっぱりーっ!!)


和美ちゃんの興奮した声に、私もぎくりと肩を震わせる。

だって、歩美さんは森川先生の婚約者で。森川先生はお正月に歩美さんのご両親の所に挨拶に行くと言っていて……。


だから、つまり……


「相沢!?お前なんでここにっ!?」

「いやぁ、どーもどーも」


古川家で、森川先生とご対面なわけで。

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