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■ □ ■ □


「まさか歩美ちゃんの婚約者が奈々子ちゃんとこの学校の保健の先生だなんてねぇ」

「ほんっと、世間って狭いわねぇ」

「学校の先生に知られたとあっちゃ、貴一さんも年貢の納め時かしらねぇ」

「そうよねぇ。あの年の差だものねぇ」

「本人や親御さんが許しても、世間様は許しちゃくれないわよねぇ」

「古川家からとうとう犯罪者が出るなんてねぇ」

「世も末よねぇ」




「……おばちゃんたち、新年早々物騒な話はやめてくれる?」


おばさまたちのヒソヒソ声に、貴一さんが顔を引きつらせながら反論している。


私はというと、離れたところで先生とお話中。というか説得中。

主に色々な口止めを。


「ね!先生お願い!このこと誰にも言わないで」

「言わないでって、お前なぁ……」


貴一さんとのことは学校にはもちろんだけど、その他のことも誰にも言わないでとお願いする。
その他のことというのは、私が本当は貴一さんと付き合ってもいなくて婚約者のふりしてるということだ。

言わないでの一言に、その全てを察してくれた森川先生は呆れ顔。




「良いのよ、奈々子ちゃん。全てバラしても。いっそ捕まった方が平和よ」

そう言って歩美さんが笑顔で寄ってくる。笑顔は相変わらず綺麗だけど、言ってることは物騒だ。
貴一さんと付き合ってないことを知っている歩美さんはとても怒っているみたい。主に貴一さんに。



ちなみに、

「えっ!?婚約者!?社長の隠し子じゃなくて??」

「ヤッシー、うるさい!」


八嶋さんはまだ混乱中だ。

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