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「……それより。貴一さんこそ、どうしたの?」

さっきまで大人の人たちに交じってお酒呑んでたのに。

どうしてここに。そう尋ねると、貴一さんはにんまりと笑った。


「忘れものしちゃったから」

「忘れもの?」

なんのことかと首をこてんと傾げると、そのまま、ちゅっとキスされた。



「おやすみのチュー」

そう言って貴一さんがへらりと笑う。悪戯が成功したみたいで満足そうに。


「なぁっ、ばかっ!!」


いつもの不意打ちに、学習能力のない私はまた顔を真っ赤にさせる。
せめて口で抗議してみるけれど、貴一さんにとっては逆効果なようでにまにま意地悪な笑みを浮かべている。



「さ、奈々ちゃん部屋に戻ろうか」

そう言ってやや強引に貴一さんの部屋に連れ込まれる。
部屋に入れば、私はすぐにベットへぽすんと投げ出され、その上に貴一さんがのしかかる。


「ちょっ!?なにナチュラルに押し倒してるんですかっ」

「んー、おしおき?」



乙女のピンチ再び。

貴一さんがサディスティックな目で私を見る。そんな目で見つめられては私は体を縮こませることしか出来ない。




「触るのと舐めるの、どっちがいい?」


貴一さんがなんだか生々しいことを聞いてくる。

触るってなに!?
舐めるってなに!?


「どっちも結構ですっ!!」

そう言って真っ赤になりながらぶんぶんと首を横に降る。

すると貴一さんがクスリと小さく笑みを零す。


そして、

顔がどんどん近づいてきて……。



(キスされるっ!?)

そう思って反射的に目をぎゅっと瞑る。



すると、


「なーんてね」

そうぽつりと呟いたかと思えば。
おデコに軽くちゅっとキスを落とし、貴一さんはすぐに私から離れた。



「……へっ?」

たったそれだけしかされなくて、私はびっくりというか拍子抜けというか……。


「なに?もっとシて欲しいの?」

私の反応に悪戯っぽく貴一さんが言う。


もっとだなんて、めっそうもない!
そう首を横に振ると、貴一さんに頭を撫でられる。

そのまま髪の毛を整えられると、


「明日帰るんだから今日はゆっくり寝なさい」

そう言って布団を掛けられる。



「ちょっ、貴一さんっ」

「はい、おやすみー」


有無を言わさない動作で灯りまで落とされる。



「それじゃ、おじさんはこれから大人の時間だから」

そんなことを言いながら貴一さんは部屋から出て行ってしまったわけで。


なんだかんだ言ったものの、貴一さんに手を出されなくてショック。




(……あたし、もしかして色気ない?)


残された部屋で、私は心なかでそう呟く。

だってだって、今回は前みたいな邪魔は入らなかったのに。

(そりゃ、抵抗はしちゃったけど、それはいわゆる嫌よ嫌よも好きのうち〜というやつであって……)


そんなことを考え出してしまい、
結局私は今夜もすぐに寝付ける事はできなかったのだった。

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