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一月二日
一月二日。
この日も、目覚めは犬の鳴き声だった。
古川家のわんこは八太郎と言う名前。昨日、和美ちゃんにそう教えてもらった。
八太郎は食パンみたいな綺麗な毛の色をした柴犬で、とても可愛い。
(帰る前にもう一回もふもふしたいなぁ……)
遠くで聞こえる八太郎の鳴き声を聞きながら、お布団のなかでそんなことを考える。
寝返りをうつと、そこには昨日みたいな貴一さんの姿はない。
昨夜は結局この部屋に貴一さんが戻ってくることはなかった。酔いつぶれてどこかで寝てるんだとは思うけど、ちょっとさみしい。
起き上がって部屋から出る。
空はまだほんのり暗い。
(昨日の雪はまだ降ってるのかな……もしかしたら積もってるかも)
そう思って玄関の方まで回り、音を立てないように戸をゆっくりと開け外へ出る。
「わぁ!」
目の前に広がるのは、真白な雪の絨毯。
こんな景色を見るのは生まれて始めてで、寒さも忘れて私は外に飛び出した。
(感動っ!!)
ようやく山から顔を出してきた朝陽の光が、雪に反射してキラキラ。足跡つけて歩くのが楽しい。
外に出ると八太郎のはしゃいだ鳴き声がよりはっきり聞こえて、鳴き声のする裏庭の方へ私も行ってみる。
古川家の裏庭は、これでもかと言うほど広かった。広いというか奥行きがすごい。
池もあるし、庭の半分は畑になっていて、柿とかの実の成っている木々も沢山ある。私にTOKIO並のスペックがあれば庭だけで自給自足出来そうだと思った。
その畑の向こう側の、石の階段の上に木造の小屋みたいな家みたいな建物が幾つも立っている。
(民家……じゃないよね。貴一さんちのお庭だし……物置小屋的な?
……って、ん?なにあれ……)
奥の方の建物から、煙りみたいなものが出ていることに気付いた。
さっきまで気付かなかったけど、灰色っぽい煙がゆらゆらと。
(まさか山火事?小火?)
八太郎の鳴き声もちょうどその辺りから聞こえてきて、不安になった私は慌ててそこに駆け出した。
すると、そこにいたのは。
「……貴一さんの、お父さん?」
貴一さんのお父さんの隆雅さんだった。