1641


そうして予約していたお店に着いて、ご飯を食べて、適当に雑談して……。


バイト先では見れなかった貴一さんのいろんな面を垣間見れて私は終始ドキドキしていた。けど、二人とも特に気にした風でもなかったから気付かれてはいないはず。


食事も終えて、陸と貴一さんの二人に家の近くまで送ってもらう。

聞くところによると陸はこの後貴一さんの家に行ってそのまま泊まるのだとか。徹夜でゲームするって。

ほんとに仲良いなこの二人。


(陸に彼女が居なかったら普通にそっち方面の勘違いしちゃうかも……)

そんなことを思ったなんて、絶対秘密。





二人と別れて家に入る。
部屋に明かりはなくて、どうやらママはまだ帰ってきてないらしい……。

私はまっすぐ自分の部屋に入り、ベッドにダイブ。


(貴一さんの、私服、かっこよかった……)

改めて先ほどのことを思い出して、またしても「きゃーっ!」とベッドの上でもんどり打つ。


昨日はメアドゲットして、今日は私服見れて、一緒に食事した。


(すごい進展。やばい。展開早過ぎてついてけないかも。これ以上心臓もたないかも)


そんなことを思いながら深呼吸して心臓を落ち着ける。

すると、ポケットのなかのスマホからメールの着信音。相手はなんと貴一さんからだ。


(きっ、貴一さんからメールっ!?)


すぐにベッドから起き上がり、布団の上で思わず正座になる。

震える指先で画面をタップする。


『今日は来てくれてありがとう、楽しかったよ。また暇な時はおじさんと遊んでね。 古川貴一』


きゅん。ってなった。

胸の奥が幸せ過ぎてむずむず疼く。
嬉しくて、嬉しくて、もう死んじゃいそうなくらいに。





(返事、どうしよ……っ)


ぎゅっとスマホを握る。



(すぐに返事したら引かれたりする!?ていうか、どんな言葉で返したらいいの!?)

いろいろ考えて頭の中がてんやわんや。


それに、

(「また遊んで」って、その言葉は真に受けていいの?真に受けるよ?)

貴一さんにとってはただの社交辞令のひとつかもしれない。

もしくは、いつものたらし文句。



けど、私にしてみたらこれはチャンス。バイトを辞めてしまった貴一さんと、この先また会う時間を得るためのチャンスだ。



『こちらこそ、ありがとうございました。私もまた貴一さんに会いたいです』


気持ちをそのまま打ち込むとそんな文章が出来上がってしまった。

もっとノリの良い文章で返したかったけど、頭の中いっぱいいっぱいでそんなことえを考える余裕も無かった。



< 8 / 257 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop