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■ □ ■ □



目を覚ましたら、夕方だった。



(なんでっ!?)


部屋に射し込むオレンジ色の夕焼けの光に私は驚いて布団から飛び起きた。

(って、あれ?なんで私、お布団で寝てるんだっけ?)



「こら、まだ寝てろ」

横からそんな声が上がる。
振り向けば森川先生が険しい顔をして私を見てた。


「え?先生?なんで??」

「お前……、覚えてないのか?」

「……へ?」


覚えてない?なにを?

そんな反応をする私に、先生は溜息を零した。


「倒れたんだぞ。子供たちと遊んでる最中に」

「えぇっ!?」


ちびっ子と遊んでる最中。私は熱が出て倒れたらしく、古川家の部屋の一室で寝かせられていたらしい。

部屋を見渡せば、過剰なほどの暖房と加湿器。お布団も毛布二枚重ねだ。
ご迷惑をお掛けしてしまったことは明白で、恥ずかしくて頭を抱える。

確かに、今朝は寝起きで雪の中うろうろしてたし。そのあと朝風呂入ったりして。またそのあと雪の中で子供たちと遊んでたし、汗かきながら。

加えて、寝不足だったし。


……考えれば考えるほど、体調を崩す理由が出てきて、自分が情けない。





「熱はもう下がったみたいだけど大人しく寝ておけ」

「……はい」


しゅんとなって頷く。
先生が見ててくれたのかな、せっかくの休暇中なのに……。


「せんせい、ごめんなさい」

「ばか、気にするな。

……まぁ、むしろ好都合と言えば好都合だったしな」


好都合?
先生がなんだか意味深なことを呟く。

その意味を追求しようとしたその時。
がらりと部屋の襖が開けられた。


「あら、奈々子ちゃん。気がついたのね。良かったわ……」

襖を開けて入ってきたのは藤子さんで、私の顔を見てほっとしたように胸を下ろした。


「あの、ごめんなさい。ご迷惑お掛けしてしまって……」


「まぁ、頭を上げて頂戴。
こちらこそ、ちびちゃんたちと遊んで貰っちゃってこんなことになってごめんなさいね。

今日はもう帰るのは難しいでしょうから、泊まっていってね」


そう優しく声をかけられて、また泣きそうになる。

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