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一月三日

■ □ ■ □


翌日、一月三日。

この日は昨日の熱もすっかり下がり、私は元気なった。けど、貴一さんは私の側にずっと付いてて離れてくれない。


これがいつものスキンシップならまだマシだけど、触れてこないし、口数は少ないし、笑わないし。

つまり、いつもの貴一さんじゃなくて調子が狂うというか……。
もしかしたらやっぱり怒ってるのかもしれないと思って不安になる。


(離れないのも、あたしがまた馬鹿やらかさないように見張ってるだけなのかな……)

そんなことを考えて頭が痛くなる。



「平気?」

「え?」

「まだ具合悪い?」

「ううん、へーき」


心配する貴一さんにそう笑って返事をする。貴一さんは心配性なのか、元気になっても度々そう聞いてくる。
今日こそはお昼に帰る予定だけど、こんな調子で大丈夫かな。

日の当たる縁側に座って八太郎をもふもふしながらそんなことを考える。



すると、


「貴一君って、案外へたれだよね」

急に上からそんな声が聞こえてきた。


貴一さんと一緒に顔を上げれば、軒の上から那由多さんが顔を出してこちらを見ていた。


「那由多さん!!なんでそんなところに!?」

「雨樋の掃除中。大掃除の時にやってなかったのがバレたから。

でもって、はしごが下に落ちちゃったからさー、貴一君助けて?」


屋根に登ってはしごを下に落ちて降りれないと言う那由多さん。貴一さんは呆れたような顔をして、縁側から立ち上がり外に出る。


「はしご、どこに落としたの?」

「北の母屋のとこ」

「……わかった。

ごめんね、奈々ちゃん。ちょっと行ってくる」

「うん」


そう言って貴一さんを見送ると、貴一さんの姿が見えなくなってしばらくしてから那由多さんが私に声を掛けた。


「貴一君ってああ見えてへたれだよね」

そんな事を言われ、きょとんとなる。
さっきも言ってたけどその意味がよくわからない。

貴一さんがへたれ?
そんなことないでしょ。

そんな反応をする私に那由多さんは、「わかってないの?馬鹿だね」とばっさり。

「ばっ!?」

馬鹿って言った!馬鹿って!

ムキになって私も立ち上がると、那由多さんはまるで忍者かなにかみたいにくるりと身を翻して屋根から地面に降り立った。



(降りれるのかよ!)

貴一さんがはしご取りに行ったのっていったい……。


目の前に立つ那由多さんはそんなこともお構い無しに話を続けた。


「自覚ないならそれでもいいけど。

……まぁ、そういうわけで。貴一君のことよろしくね」



那由多さんが頭を下げた。


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