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冬休みの宿題

■ □ ■ □



一月四日。

三が日を過ぎると、不思議とお正月気分もすっかり収まってしまう。そんな本日は、学生らしく冬休みの課題に取り掛かることにした。

澪と一緒に課題をしようと約束をして、昼からずっと澪の家でお勉強だ。



英語と国語のテキストを無事終わらせて、今は数学に悪戦苦闘中。


「澪ー、この問題解る?」

「ううん、私も今その問題で躓いてて」

「だよねー」


テキストの最後の方の、ややこしい文章問題に私も澪もお手上げ状態。
答えを見て適当に書いちゃうのもいいけど、真面目な澪はそんなこと出来ないだろうし……。



「あ!先輩に教えてもらえないかな?」

「お兄ちゃんに?」


澪のお兄さんは頭が良いから、前のテスト勉強の時みたいに頼めないかと言ってみる。
私の言葉に澪は困った様な顔をする。
おっとりした澪は、寡黙で厳しいお兄さんのことを少し苦手に感じてるからかもしれない


「今、先輩はお家に居る?」

「居るけど、迷惑かけちゃうかもしれないし……」

そう言って顔を俯ける。
澪はお兄さんに迷惑をかけるのが嫌みたい。

けど、私は知っている。
澪のお兄さんは顔には出さないけど澪を心底溺愛してて、本当は澪に構いたいことを……。


「あたし、頼んでみるね!」

「あっ、奈々子ちゃんっ」

呼び止める澪の声も聞こえないふりして、席を立って澪の部屋から出る。
すると丁度いいタイミングで、お兄さんも二階に上がってきていた。


「あっ!神崎先輩こんにちはー」

元気良く声を掛けると、お兄さんは相変わらずの無愛想で「こんにちは」と事務的に返事をした。


「ねっ、お兄ちゃん!数学教えてくれませんか?」

「誰がお兄ちゃんだ、数学くらい自力で解け」

「あーん、先輩のいけず!それが出来ないからこうして頼んでるのに!」

澪のお兄さんは相変わらずつれない人だ。けれど私はそんな先輩にもめげずにこう言葉を続けた。

「せっかく澪がお兄さんに教えてもらいたいって言ってるのになぁ」

わざとらしく言ってみると、先輩は目に見えて動揺した。

「澪が?」

「はい!」

訝しげに尋ねられ、私は元気良く頷いた。すると先輩は数秒の間を置いてから「仕方ないな」とぽつりと呟いたのだった。

咳払いしながら顔を背けるお兄さんの表情は、どことなく嬉しそうなわけで。


(神崎先輩、ちょろいなぁ)

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