1641
そうして、神崎先輩に課題を教えてもらえることになった。
先輩に教えてもらうと、さっきまで意味不明だった問題も魔法みたいにスラスラ解けてしまうから不思議だ。
先輩に教えてもらえたお陰で数学のテキストも無事終了。
残る課題は地理のプリントのみで、こちらもすぐに終わらせることが出来た。
「終わったー!これで残るお休みは自由だぁー!!」
プリントのラストの穴埋め問題が終わると、私は嬉しくてついペンを放り出してうーんと体を反らせた。
「わっ!奈々子ちゃん早い!」
「澪の分が終わるまで静かにしてろよ」
浮かれる私に澪と先輩が声を上げる。
見ると、澪はまだプリントの3分の2くらいしか埋まってなかった。
「奈々子ちゃん地理得意なんだね。すごいね」
澪がほんわりと笑う。
可愛い澪に褒められて、私も照れながら「それほどでも」と言葉を返す。
地理のプリントの最後の問題は、日本の地方の旧国名を埋めるという結構マニアックな問題だった。
私もそれほど地理が得意と言うわけではなかったけれど、最近熟読した全国陶器マップが旧国名で表記されていたのでたまたま覚えていたのだ。
焼物は、越前焼〜とか産地の名前が使われることが多いから。
貴一さんの会社の全国陶器マップが思わぬところで役に立った。
(貴一さんに感謝っ!)
心の中で貴一さんに手を合わせる。
そうやってすぐ彼を連想してしまうのが、乙女思考回路過ぎてちょっと恥ずかしいけど。
「手伝おっか?」
「ううん、大丈夫だよ。お兄ちゃんにも見ててもらってるし」
私が尋ねると、澪はそう言いながらにこりと先輩に笑みを向けた。
先輩は無表情で気取ってるけど、その背景には花が咲きそうなくらいに喜んでいるのがわかる。
(きっと、頼られて嬉しいんだよねー)
そうにまにましながら先輩を見つめると、ギロリと睨まれた。
ほんと、微笑ましい兄妹だ。