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「でも確かに、この季節って変な人出ますよねー。あたし、全裸コートのおじさんとかと昔遭遇しました」

「無事だったのか」

「はい!撃退したのであたしは無傷でした」

「……凄いな」

「えっへん!」


そうけろりと笑って返すと、先輩は哀れみを含んだ顔して私を見る。

先輩の視線に、私は急に自分の話が恥ずかしくなった。だって痴漢を撃退とか、 普通の女子高生はそんな情けない武勇伝そうそう持ってないもんね。



(どーせ、あたしは澪みたくか弱くない女ですよー)


そう思って唇を尖らせる。

けど、そうか。私に足りないものって女らしさか。化粧や服装にはどれだけ気を使って女子力上げても、性格ばっかりはどうしようもない。


(あたしがもうちょっと澪みたいに繊細でおしとやかでか弱くて、守りたくなるような女の子なら貴一さんもその気になってくれるかな……?)

そんなことを想像して。
胸の奥がちょっとだけ苦しくなる。



「先輩、あたしって魅力ないですか!?」

「は?なに言ってんだ急に」

「だーかーら!あたしって魅力ないですかって訊いてるんです!!」

「なに急に馬鹿なこと言ってんだって言ってるんだ。二度言うな!」


「あーん、先輩のいけずぅ」

「気色悪い声出すなっ!」


必死な私に先輩はつれない。

澪という女の子らしい妹を持つ先輩に意見を聞きたいのに。
貴一さんに好きになってもらえるような魅力的な女の子になるにはどうすればいいのか。

よし、今年の目標は断然女の子らしくなる!だ。そうしよう。


「先輩!あたし今年は澪みたいな可愛い女の子になるって決めたんです!」

「そうか、よかったな」

「そんなあからさまに面倒臭そうな声出さないで下さいよー!ちゃんと話を聞いて下さい!!」

「知るか」


ねだる私に先輩はやっぱりつれない。


「恋愛相談なら他所でやれ」

そう先輩がばっさり吐き捨てる。
て、あれ?私、先輩に恋愛のことなんて一言も言ってないのに。図星だけど。



「先輩、どうして恋愛相談って……」

「それ以外で女らしくなりたい理由でもあるのか?」


ごもっとも。

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