キライ × ときどき × スキな人
「町田、ほら」
「……へ?」
小野くんは自分の傘をあたしにグイッと差し出した。
えっ?
もしかして貸してくれるの?
「何ぼーっとしてるんだよ、町田は俺の世話役だろ?俺がこの足で傘さして帰るの大変だとは思わないのかよ」
……だよね。
小野くんがそんな優しいイケメンなわけないよね。
ってか世話役じゃないし。
席が隣ってだけで勝手に小野くんがあたしを世話役にさせてるだけだし。
だけど、この差し出された傘取らないと小野くんに何言われるかわかったもんじゃない。
あたしが黙って傘を受け取ったら、小野くんは満足そうに笑みを零した。
「よかったなー町田。優しい俺のお陰で雨に濡れずにすむじゃんか」
いや、濡れた方がマシだったかもしれない。
……なんて事言えるわけないけどね。