キライ × ときどき × スキな人



「ああ本当だよ。だって町田は傘を持ってなかったし、俺はまだ松葉杖が取れてねーから傘さしにくかったしな」



あっ、声の感じがちょっと不機嫌だ。


あたしが気づかないフリしてるからなんだろうな。



「ふーん、なんか小野くんいつも町田さんには優しいよね」



ーーはい?


あなた今、なんと言いました?


小野くんがあたしに優しい?!


さすがのあたしも振り向いてしまった。


だって何をもってして、そんな風に思うのか疑問だったから。



「だって前に私が傘忘れた時、玄関口で雨宿りしてた私を置いて先に帰ってったじゃん」



えっ、そうなの?


でもきっと昨日は足を怪我して傘がさしにくかったからじゃないかな。


あたしが疑問を打ち消している間、小野くんはとぼけた様子でさらりと一言。



「そんな事あったっけ?」


「ひどっ、あったよー!松葉杖なのに傘さして、笑顔でバイバイとか言って帰ってっちゃったじゃん」



あたしの疑問も否定された。



「ははっ、そうだっけ。ごめんごめん」



笑って誤摩化すイケメン。


不満げに口元を膨らます女子。


だけど最終的には小野くんの爽やかな笑顔に和まされて自分の席へと戻っていっちゃう。


小野くんはズルいんだ。




< 13 / 19 >

この作品をシェア

pagetop