キライ × ときどき × スキな人
「しょーがねぇなぁ〜」
なにが?
なにがですかね?!
むしろしょうがないのは小野くんの脳内だと思うんですけどね!
……なんて事言えるわけないし。
今だに声でないし。
すると小野くんは再びあたしに向き直って、
「しかたねーから俺も町田の事、スキになってやるよ」
破顔一笑した。
その顔がどこか照れ隠しのように見えるのは気のせいだろうか。
訳が分からない。
やっぱり小野くんは苦手だ。
「まぁしかたねーから、今日も一緒に帰ってやるよ」
なんですかソレ。
しかたない意味がわかりませんけど……。
やっぱり小野くんはキライだ。
あたしから目を離した小野くんは、そのまま窓の外を見やった。
「だって今日も雨だしな」
そんな横顔がどこか嬉しそうに見えるのは、あたしの思い上がりだろうか。
ーー雨、
ずっと止まなければいいのにな……。
なんて事を、フと思ってしまったあたしは小野くんに毒されたのかもしれない。
まだ今日という日が始まったばかりだというのに、小野くんと帰る帰り道がとても待ち遠しく思えるんだーー。
【fin】