ヒカリ


「駆け引きが下手だよね」

拓海が言うと
「お前に言われたくない」
と拓海から顔を背ける。


「その子はたぶん、お前とは一線をひいておきたいんだ。結城は別に女の子に不自由してる訳じゃないし、別にいいじゃないか。大人の対応してればさ」

「簡単に言うなよ。俺にはプライドがあるんだ」

「たいしたプライドじゃないじゃん」

「なんだよ。童貞のお前に言われたくない」

「違うよ!」
拓海は顔をしかめて抗議する。

「うそつけ」

「知らないくせに。俺はいちいち報告しないからな」

「じゃあ、なんでそんなに色気がないんだよ。いつまでもお子様顔のくせに」

「八つ当たりするなよ」

「うるせー」
結城がクッションを投げつけてくる。


拓海は腹が立ってクッションを投げ返した。

「すねるなら、お前の部屋で一人ですねてろ! 俺はもう寝るからな」


結城はソファから立ち上がって、クッションを抱きながら自分の部屋に入っていく。

拓海も自分の部屋に入り、Tシャツを脱ぎ捨て、それからデニムのポケットに手を入れた。


指先に紙片が触る。


携帯番号。


電話をかけるべきなのはわかっていた。
けれど……。


拓海は紙片を取り出すと、鞄の中にしまい込む。


そして仰向けにベッドに倒れ込み、目を閉じた。

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