ヒカリ

十三



「休みって、なにしていいかわかんないよな」
結城がソファに転がって、つまらなそうにつぶやく。


テレビではB級グルメ番組が流れている。


「テレビ他にないの?」
拓海は二人分の焼きそばを持ってラグに座りこむと、テーブルに置いてあったリモコンでチャンネルを変える。


「どれもこれも、つまんない」
結城が箸を手に持った。

「じゃあ、消すか」
拓海はテレビの電源を切って、リモコンをソファに放り投げた。


クーラーが効いていてとても涼しいが、窓から入る日差しは夏を感じさせる。
ベランダには二人分の洗濯物が干してある。
もう乾いているだろう。


「お盆、予定ある?」
結城が焼きそばをほおばりながら訊ねた。

「来週ちょっとだけでかけるかな。でも帰ってくるよ」

「何すんの?」
結城が訊ねる。

「仕事」
拓海は嘘をついた。


本当は、引っ越し前の、ゆきの部屋の片付けに付き合う。
すべてを知ったゆきは、拓海からお金を借りることを了承したのだ。


「お盆も仕事あるの? 大変だね」
結城が気づいている様子はない。

「結城は?」

「俺、なんもない。後半仕事に出るけど」

「ふうん」
拓海はお皿に残った焼きそばを箸で集めながら言った。


「そろそろ出る?」
結城が食べ終わり、立ち上がりながら訊ねる。


拓海は「うん」と言って、食器を持って立ち上がった。

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