ヒカリ

十四



結城からの連絡はぱたっとなくなった。


当たり前だとわかっている。
でも奈々子は気になって何度も携帯を見てしまう。
こちらから連絡する必要もないし、向こうだって連絡する必要はない。


「わかってるんだけどな」
奈々子はそう独り言を言った。


結城からの連絡がないかわりに、邦明から毎日のようにメールが入る。


他愛もない話題。
今日の天気。
仕事での出来事。
最近話題のニュース。


金曜日の夜

「明日の午後、仕事が終わった後、水族館にいきませんか?」

とメールが入った。


邦明からのデートの誘い。
奈々子はとたんに緊張してしまう。


何を話したらいいだろう。
二人きりで食事をして、間をもてあましてしまうことはないだろうか。


「でも付き合ってるんだし」


奈々子は思い切って「はい」と返事をした。

< 118 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop