ヒカリ


すると表の砂利を踏む音が聞こえ、それに続き「ただいま」と弟が帰って来た。


「おかえり」母親が玄関に出て行く。
奈々子もそれに続いた。


作業着を着た弟が玄関をあがってくる。
短く切った髪が汗びっしょりだ。

「ねえちゃん、おかえり」

「ただいま」

「友達って?」
聡は早速リビングを覗き込む。それからすぐに慌てたように頭を引っ込めた。

「なにあれ?!」

「ちょっと、失礼でしょ」
母親がたしなめる。

「人形?」

「ちがうわよ」
奈々子は呆れてそう言った。

「こ、こんにちわ」
聡は恐る恐るリビングに足を踏み入れる。

「こんにちわ。お邪魔してます」


聡は結城の向かいにあぐらをかくと
「姉貴と結婚するんですか?」
といきなりたずねた。


「ちょっ、違うわよ」
奈々子はあわてて聡を制止する。

「違うの?」

「違う違う。ただの友達だから」

「へえ。どこで知り合うの、こんなイケメン」

「どこでもいいでしょ。聡、着替えておいでよ」

「親父が見たら、倒れるな」
聡は立ち上がりながらそう言った。


奈々子は溜息をつく。
結城に「ごめんなさい」と言った。


「なんで謝るの?」
結城はなんてこともないように平然としている。

「奈々子、帰って来て早々なんだけど、いつ帰るの?」

「うん……明日、かな?」

「短いのね」

「まあ」


当初はもっと長く滞在する予定だったが、結城とともに何日間もだなんて、精神的にもたない。

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