ヒカリ
「じゃあ、おやすみなさい」
結城が頭をさげた。
「おつかれさま。おやすみなさい」
母親も頭をさげた。
「部屋が暑かったら、窓をあけてね。この辺りは泥棒なんてのもいないから、開けて寝ても大丈夫よ」
そういって笑う。
奈々子は結城を連れて、二階へとあがった。
この瞬間にもリビングでは再び結城の話題で盛り上がるのだろう。
急な階段を上がると、目の前に奈々子の部屋、右隣に聡の部屋がある。
奈々子は聡の部屋の襖を開け、結城を中に入れた。
蛍光灯の紐を引っ張る。
扇風機をまわし、窓をあけた。
カーテンがふわふわと風に揺れている。
心地いい風が入って来た。
過ごしやすい夜だ。
「おつかれさまでした」
結城は敷いてある布団の上にあぐらをかいて座った。
「楽しかった」
「本当に?」
「うん」
「もう良ければ、電気を消すけど」
「うん」
結城は枕を抱いてころがった。聡のシャツにジャージを着ている。
なんだか丈があってないようだ。
奈々子は電気を消して「おやすみなさい」と告げた。
「うん」
結城はそれだけ言うと、背中を丸める。
襖をしめると、奈々子はやっとほっとした。
すっかり疲れている。
実家に帰省して、こんなにも疲れるなんて。
なんのための帰省なのか。
奈々子は自分が寝る支度も手早くし「先にねるね」と家族に声をかけた。
聡は
「俺、あんな美人が隣に寝てたら、緊張して寝れねーよ」
と言っている。
「馬鹿じゃないの?」
奈々子は笑った。
「おやすみ。今日はありがとう」
奈々子はそう言うと自分の部屋にあがっていった。
電気を消し、布団に潜り込む。
懐かしい実家の匂い。
奈々子はすぐに眠りにおちた。