ヒカリ


そこに
「みつけた!」
という声が聞こえた。


顔をあげると、すらりと背の高い、モデルのような容姿の女性が立っている。


見覚えがある。


奈々子はそう思ってから、はっと気づいた。
鍵を届けに来てくれたときに一緒だった女性だ。


「あれ?」
結城が声を出した。

「久しぶり。全然声かけてくれないんだもん」
女性は拓海の隣に「いい?」と訊ねてから、席についた。

「紗英さん、久しぶり」
拓海が言った。

「探してたんだ。よかった、会えて。最近、結城ぜんぜん返事くれないから、なじみの店を回ってたの」

「へえ。どうしたの、そんなに」

「社長から頼まれちゃって。結城、社長の電話もとらないでしょ」

「俺、関係ないもん」

「社長はまだあきらめてないみたいよ」
紗英は緩くウェーブしたショートヘアをかきあげる。

拓海が
「紗英さん、なんか飲む?」
と訊ねる。

「じゃあ、ビール」
紗英はその長くて細い腕をあげて、店員を呼びオーダーした。


グリーンのノースリーブに白のショートパンツをはいている。
長くてまっすぐな足を組見直す。
ピンクの華奢なサンダルをはいていた。

「今日ね、事務所創立記念のパーティがあるのよ。知らなかったでしょ?」

「うん」
結城がうなずく。

「社長が絶対に結城にもきて欲しいっていってるの。でも連絡がとれないからって、私、たのまれちゃったんだ」

「ええ、俺やだよ」
結城が口をとがらす。

「そんなこと言わないでよ。私頼まれてるんだから」

「連絡つかなかったって、言えばいいじゃん」

「嫌よ。私には私の立場があるの。ね、お願い」
紗英は結城の腕に手を伸ばした。

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