ヒカリ

二十三



どんどん新しいものが見えてくる。
夢の中の人が、一人の生身の男性にかわる。


身体を支える腕の強さ。
だんだんと熱くなる皮膚の温度。
額から首筋に流れ落ちる汗。

快感に眉を寄せ、下唇を噛むその表情は、抱かれる前は見えなかったもの。


結城が言った通り、奈々子はこの行為の魅力を徐々に理解しはじめている。
それ自体は本能的で動物的だけれど、この人しかいないと思わせる、絶対的な愛情行為。



押し寄せる波が、奈々子から余計な思考を奪う。


「もう、無理……」
心臓が今すぐにでも止まりそうだ。

「無理って言われて、やめると思うの?」
結城が耳元でささやく。


「まだ離さないよ」


真っ白で清潔なシーツ。
やや固めの広いベッド。
ホテルの窓は大きく、都会の明かりと青白い月がくっきりと見える。


暗闇の中、結城の身体が青白く光って見えた。
二人のうめきと息づかいだけが響く。
こんな風に夜を過ごすのは、もう何度目だろうか。


「何も考えないで。全部解放して。どんなに声をあげたって、誰にも聞こえない。俺以外には」

「でも……」

「我慢しなくていいんだ」
結城が奈々子の頬を触る。
大きくて、力強い。


奈々子は結城の腕にしがみつき、堪えきれず声をあげた。


「この顔がそそる」
結城は奈々子の唇を親指でなぞった。


「全部、俺のもの」



そして、奈々子は経験したことのない感覚に、身をよじり叫び声をあげた。


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