ヒカリ
「先生、よろしいですか?」
「何?」
かず子先生が、診察台に寝転ぶ子供のお腹を押しながら、顔を上げた。
「吉田製薬の林さんが、引き継ぎのご挨拶をしたいとおっしゃって、いらっしゃってるんですが」
「待合室には何人?」
「あと二組いらっしゃいます」
「じゃあ、その方達が終わったらお会いするから、お待ちいただいて」
「わかりました」
奈々子は診察室を通り、待合室に抜ける。
窓際の茶色いソファに、二人は腰掛けていた。
窓からの光の帯に、埃が舞っている。
奈々子が近づくと、二人は立ち上がる。
奈々子は
「あと十五分ほどお待ちいただけますか? 今いらっしゃっている患者さんの診察が終わってからなら、お会いできると申しておりますが」と訊ねた。
「わかりました、お待ちしています」
林さんは笑顔でそう答えると、二人で再びソファに腰掛けた。