ヒカリ
コンビニでお菓子と飲み物を買う。
「二人じゃ食べきれない量だよ」
袋をのぞきながら結城が言った。
「こういうのは、多めがいいんです」
奈々子は自信満々にそう答えた。
大通りにはひっきりなしに車が通る。
十月も終わりに近づくと、寒さが増す。
奈々子は薄手のコートを羽織っていたが、寒さに身を縮めた。
結城は自分のマフラーを奈々子の首にぐるぐると巻く。
「大丈夫ですよ。須賀さんが寒い」
「もうすぐで家だから」
結城はそういうと微笑んだ。
エレベーターに乗り、六階で降りる。
以前ここに来たときのことを思い出す。
まだとても暑くて、それから夢のような恋をしていた。
鍵を開けて中に入る。
玄関の電気をつけると、相変わらず靴がいっぱいならんでいた。
「お邪魔します」
奈々子はそう言って家に上がる。
結城はキッチンカウンターの電気だけつけると「どうぞ」と奈々子に声をかけた。
薄暗い部屋の中。
前と何も変わらない。
でも、なんでだろう。
前よりもずっと広々としていて、何かが足りない気がした。
「座って」
結城はキッチンからグラスを持ってくる。
ソファ前のガラステーブルに置いた。
奈々子はレジ袋からお菓子とお酒を取り出し並べた。
「柿ぴー、好き」
結城は勢いよ行くソファに飛び乗ると、袋を手に取って開ける。
そこからピーナッツを選って自分の膝の上に取り出した。
「一人でピーナッツばっかりとらないの」
奈々子は呆れて、子供を叱るように言った。
「残りはあげるよ」
渡された袋をのぞくと、ナッツはもう二三粒しかない。
「柿ぴーが好きなんじゃなくて、ピーナッツが好きなんですね」
奈々子は笑って、結城の隣に座った。
「うん」
結城は口をもぐもぐさせながら、ビールの栓をあける。
プシュっと音がした。
奈々子は自分のグラスにビールをつぐと、袋から柿の種を取り出し一口食べはじめた。