ヒカリ
ゆきとはお店の前で別れた。
初夏の夜はさわやかだ。
車のヘッドライトが通り過ぎる。
「送って行ってあげたいけど、この間のこともあるし、また迷惑をかけちゃまずいから」
拓海はそう伝えた。
「今日、飲んでないのに。随分警戒してるんですね」
ゆきがいたずらっぽく訊ねる。
「そりゃ、ね」
拓海は頭をかいた。
けれどそう言ってから、ゆきにあまりにも失礼なんじゃないかと、気になりだした。
そして
「ゆき先生、魅力的だから、しらふでも危ないんだ。あのとき酔ってたから信憑性もないと思うけど、誰でもよかった訳じゃないと思うよ」
と付け加えた。
ゆきはにこっと笑うと
「ありがとうございます」
と言う。
それからひょい、と拓海の頬にキスをした。
拓海はびっくりして目を見開く。
「もし誰か女の子を抱きたいって時には声かけてください。拓海先生ならセフレもオッケーですから」
ゆきはそう言って、手を振った。
「おやすみなさい」
「お、おやすみ」
拓海は呆気にとられて、やっとそう返す。
ゆきはくるりと向きを変え、自宅アパートの方へと歩いて行った。
華奢な背中。
細身のデニムが彼女の適度に丸い腰を際立たせている。
拓海はとにかく胸がどきどきして、変な汗が出て来た。
彼女の裸身がちらつく。
細いのに、意外と胸はおおきかった。
ふとそんなことを考えて、拓海はあわてて頭を振った。