ヒカリ
結城はじっと拓海を見る。
何を考えているのか、拓海は探ろうとしたがわからなかった。
「お前が自分を見ていないことは知ってるけど、繋がってたいからセフレでもいいって言ったんだろう? 女の子が男みたいに純粋に快楽だけでセックスするとは、経験上あんまり考えられないな」
「そうかな……」
「やっぱり」
「何?」
「お前が言われたんだろ?」
「違うって」
拓海は首を振った。
「……人と向き合う気になったの?」
結城が訊ねた。
結城が拓海を見ている。
拓海はなんと返答してよいのかわからない。
人と向き合うなんてこと、自分にできるわけがない。
「違う。俺は変われないよ」
拓海が結城に背を向けてキッチンに向かう。
「お前もそうだろ?」
結城が黙る。
拓海はシンクにコップを置いて、勢い良く水を出した。
透き通った水がコップから溢れ出す。
すべてを洗い流して、排水溝へと消えて行く。
こんな風に、全部をきれいに流してしまえればいいのに。
拓海は無言で自分の部屋に入ると、着替えもせずにベッドのシーツに包まった。
リビングの結城の気配は、いつまでも消えなかった。