ヒカリ



異様に暑い。


子供の頃の七月はもっと涼しかったように記憶している。
吸い込む空気がサウナのようで、拓海はどうしても口を開けてしまう。
できればクーラーの効いた部屋でごろごろしたかった。


子供達が帰った午後三時。
飯田先生とゆきと拓海は、ひまわり組に集まって夏祭りの計画を立てていた。


「拓海先生、たいこ叩ける?」
飯田先生が訊ねる。

「叩いたことはないですけど。毎年はどうしてるんですか?」

「子供のパパ達に頼んだりしてるんだけど、せっかくだから拓海先生も参加したらいいと思って」

「簡単ですか?」

「普通に叩くのはそれほど難しくはないと思うわ。リズム感さえあれば。でも人を魅了する太鼓ってなると、難しいかもね」

「ええ! そんなに要求が高いんですか?」

「そうでもない」
飯田先生が笑う。
「ちょっと練習してみて」

「はい」
拓海は頷いた。

「そろそろ、担任会議の時間だわ。夏祭り当日に配る花火の手配、二人にお願いしてもいい?」

「毎年決まった業者がいるんですか?」
ゆきが訊ねる。

「ううん。安くあげたいから、花火問屋へ買いにいくの。予算はこれくらいで……年少さんクラス全員分」
飯田先生が手元の資料を指差す。

「わかりました」
拓海がうなずく。

「じゃあ、ちょっと席はずします」
飯田先生は眼鏡を直しながら立ち上がった。
「あとはよろしく」

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