ヒカリ
奈々子は受付のスライド扉を開け、定位置に座る。
隣を見ると珠美がしゃべりたそうな顔をしている。
奈々子は「今はまずいよ」という顔をして、珠美を制した。
待合室を見渡すと、案の定、熱でぐったりしている子供を抱えた母親たちも、驚いたようにその彼を見ていた。
林さんは気まずそうに小声で彼に話しかける。
彼は顔色一つ変えず、静かに頷いていた。
艶のある黒髪。
ととのった眉。
くっきりとした二重の目。
長いまつげ。
これほどまでに美しい男性を、奈々子は見たことがなかった。
あまりにじろじろ見るのも失礼かと、意識して目を逸らすものの、やはりそちらを見てしまう。
珠美も仕事が手につかぬようで、そわそわしていた。
やがて患者さんの診療が一段落し、奈々子は二人を診察室に促した。