ヒカリ


「ねえっ」
珠美が声をひそめて話しかけてきた。
「信じらんないよ、何あの顔?」

奈々子は指を口にあてて
「言いたいことはわかるけど、あとで話そうよ。聞こえちゃうって」
と返した。

珠美は不服そうに頬を膨らめたが、素直にカルテの整理へと戻って行った。


しばらくして、診察室から林さんと彼が出て来た。


「ありがとうございました」
林さんは受付で頭をさげた。

珠美が
「林さんは担当を変わられるのですか?」
と訊ねる。

「はい。かず子先生のところは、こいつに任せようかと思いまして」

林さんが彼を紹介するように、前へ促した。


「須賀結城です。よろしくお願いします」

一歩前に出た彼は、名刺を差し出した。



なんて、きれいな指。



奈々子は名刺を受け取る自分の指を見て、その落差に自分で驚いた。
珠美も名刺を受け取る。
こみ上げる歓びを止められないのか、彼女のふっくらした両手で大事そうに名刺を包み込んだ。



「それでは失礼いたします。また来週に」
林さんはそう言うと、彼と二人頭を下げた。


自動扉が開く。
熱気が流れ込む。


そして彼は出て行った。


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