ヒカリ
「おかえり」
拓海はソファにごろりと横になったまま、玄関先に声をかけた。
狂ったように手を洗ったので、心は落ち着きを取り戻している。
大丈夫だ。
「ただいま」
リビングへと続く扉が開くと、結城が入って来た。
そのまま拓海の座っている革張りのソファに強引に座ろうとする。
「あっちいけよ」
押し出されそうになった拓海は、口を尖らせて文句を言った。
「俺、ソファがいい」
結城はそういうと身体をのばした。
拓海はしぶしぶソファから転がりでた。
「ビール飲む?」
拓海は転がり出たついでに、キッチンに立ち上がる。
「うん」
結城はソファに転がりながら答えた。
拓海はシルバーの冷蔵庫から、冷えた缶ビールを二本出し脇にかかえる。
結城の前のガラステーブルに置いた。
「つまみは?」
「そっちの棚にナッツ入ってる」
拓海は
「お前がとれよ」
といわんばかりに、あごで指示した。
結城はソファから身体をのばして、キッチンカウンター下の棚をあけて、缶を取り出した。
缶を開けると、プシュっといい音がする。
拓海は結城を押しやるとソファに並んで座り、結城を待たずにビールを一口飲んだ。
苦みと心地よい刺激が、食道をとおりぬける。
続いて結城もビールを口にして、ナッツを一つつまんだ。