ヒカリ
結城の後ろ姿を見ながら、拓海はリビングの電気を消す。
ソファの左手には東京の夜景が広がっていた。
ガラスに映る自分の姿を眺める。
確かに童顔で、高校のころから時が止まってしまったように見えた。
実際、時は、止まっている。
ゆきの笑顔が脳裏をよぎる。
懸命にその映像を頭から追い出した。
彼女は自分とはまったく関係のない、赤の他人だ。
いままでも、これからも関わることのない人。
拓海は、窓に向かって右側、ベランダに面した部屋に入る。
引き戸を閉めるとき、ちらりと隣の結城の部屋を見た。
一緒に暮らし始めてから、あの扉が開け放されていることはなかった。