ヒカリ
「ほら、きたよ」
珠美の声で奈々子は顔をあげた。
いつのまにかぼんやりとしてしまっていた。
自動扉が開いて、結城が入って来た。
いつものシルバーの冷蔵バッグを肩からかけている。
会計を待っている患者さんがいるため、結城は一歩後ろに下がって受付が空くのを待っている。
こんなときまで、彼の輝きは衰えない。
アルコールとは違って、結城は気分でかっこよく見えたりそうでなかったりなんてことないんだな、
などと奈々子は自嘲気味に考えた。
受付を終えた患者さんが振り向くと、あっと驚いたように後じさりした。
結城は小さく会釈して、それから受付の前に立った。
患者さんは結城から目を離さずに、帰り支度をしている。
母親の足にすがりついていた小学校前の女の子も、結城の横顔を見つめていた。
結城の魅力は、どんな女性をも釘付けにするらしい。
奈々子を見ると結城は優しげに会釈をした。
「先日は恥ずかしいところをお見せしてしまって」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました」
奈々子は内心を悟られまいとして、表情を変えずに会釈を返した。
結城は少し不思議そうな顔をして、それから珠美に
「納品リスト、よろしいですか」
と手渡した。
珠美は彼女の中では最高と思われる笑顔で「はい」と返事をし、薬品とリストを交互に見てはチェックし始めた。