ヒカリ
七
「おつかれさまでした」
園長がグラスをかかげた。
金曜日の夜、駅前の焼き肉屋で、一学期のおつかれさま会を行った。
今日終業式が無事終了した。
これから長い夏休みが始まる。
ただし一週間後には夏祭りを予定しているし、お盆以外は希望者を対象に夏期保育を行う。
拓海は引き続き出勤する。
個室は総勢二十人のスタッフを入れるには少々狭かった。
長いテーブルに炭火焼用の網が三つ並んでいる。
拓海はすぐに動けるように、個室入口近くの末席に座った。
隣にゆきが座る。
誕生日席に座る園長が「乾杯」と声をかけると、皆がグラスをあわせた。
ガラス音が響く。
拓海も近くの先生たちとグラスをあわせた。
合皮のソファに、合板のテーブル。
高級店ではなかったけれど、地元ではおいしいと評判のお店だ。
園長が「今日は遠慮なく食べてください」と声をかける。
先生たちからは歓声があがった。
炭火に火がつけられる。
つぎつぎとお肉の盛り合わせの大皿が運ばれて来た。
拓海はトングをとって、順に焼いて行く。
こういうとき、男性である拓海は、焼き担当になるのだ。
園長を含めすべて女性。
園長はこの幼稚園に雇われていて、オーナーという訳ではない。
オーナーは幼稚園の敷地の隣にあるお屋敷の六十代の夫婦で、経営にはほとんど口を出さない。