ヒカリ


裏口から診察室に入ると、誰もいなかった。


涼しい冷房の風が奈々子の身体を急激に冷やす。


「須賀さんは帰ったみたい」
奈々子はちょっとホッとして、そしてちょっとがっかりした。


「おまたせ」
と奈々子が休憩室の扉を開けると、テーブルの周りに皆が座っている。


その中心に結城が座っていた。


「あれ?」
奈々子は思わず声をあげた。

「おかえり。どうもありがとう」
結城の隣に座っている珠美が言った。

「……どうしたの?」
奈々子は思わずそう訊ねた。

「須賀さんがお腹減ったっていうから、肉まんきますよって誘ったのよ」
八田さんはまだ白衣を着ている。

珠美の隣に座って、大きな胸をテーブルの上にのせるように身を乗り出していた。


いつもは雑然として、それでいて殺風景な休憩室が、なんだか華やかに見える。
結城の周りに座る女性は、みんな最高の笑顔を見せていた。


「すみません」
結城は首をすくめ、奈々子に笑いかけた。

「いえ、大丈夫ですよ」
奈々子はそう言ってから、きっちり人数分しか買ってこなかったことを思いだした。


奈々子はシンク脇の小さな食器棚からお皿とコップを出し、常備してある麦茶を注いだ。
その間もみんなは結城とうれしそうにしゃべっている。


不思議な光景だった。

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