ヒカリ
「どうぞ」
奈々子はみんなの前にお皿を出す。
結城の前にも差し出した。
「いただきまーす」
みんなが肉まんを手に取り、食べだしてから、奈々子は麦茶のコップを持って席についた。
「あれ? もしかして、個数足りなかった?」
珠美が慌てた。
「さっきお菓子つまんじゃったから、お腹減ってないの」
奈々子は笑って返した。
「すみません、僕が突然きてしまったから。もしよければ僕のを……」
「いいんです。大丈夫ですから。わたしはいつでも食べられますし、本当にお腹は減ってないんです」
奈々子はそう言って麦茶を一口飲んだ。
「ありがとうございます」
結城はそう言って微笑んだ。
八田さんが
「おいしいでしょう?」
と結城に声をかける。
「はい」
結城はもぐもぐと口を動かしながらうなずいた。
その仕草一つ一つが、びっくりするほど魅力的だ。
本当に特別な人。
「どうして一緒にいた人は恋人じゃないって、奈々子ちゃんに言ったの?」
鈴木さんが突然訊ねた。
みんなはびっくりして鈴木さんを見る。
鈴木さんはしれっとしていた。
奈々子は顔に血がのぼるのを感じた。
「この間ですか?」
結城は顔色一つ変えず訊ねかえした。
「そうそう」
「幼なじみと同居してるんですけど、そいつが、もちろん男ですよ、そいつが、女の子の友達と一緒に鍵を返しに行ったって言ったら、僕がすごく馬鹿だって言うので」
「へえ」
鈴木さんが興味深そうにうなずいた。
「失礼があったなら謝りたいなあって思ったんですが、僕は口べたなのでうまく言えませんでした」
結城は申し訳なさそうに奈々子を見た。
「ぜんぜん、気にしてませんから」
奈々子は動揺を抑えようと、目を伏せながらそう言った。
かず子先生は肉まんを食べ終わり、席を立つ。
「奈々子ちゃん、お金、これね」
かず子先生が、奈々子にお金を渡す。
「多いです」
奈々子はお金を手に、かず子先生を見上げた。
「今日はおごりよ。みんな一生懸命働いてくれたし、須賀さんもいるしね」
かず子先生はそういうとウィンクして
「ゆっくりしてって。おつかれさまでした」
と言って部屋を出て行った。
「やった」
珠美がガッツポーズを見せる。
「キュートな方ですね」
結城は麦茶を飲みながら、そう言った。
「でしょう?」八田さんが言う。