神様と愛語



* * *



自分が人間なのだという事、ちゃんと生きているのだという事。

それを訴えたい気持ちに幾度なっただろう。

神様だからなんだ。

同じ一つの心臓を持ち、喜怒哀楽と言う感情を持つ、同じ生き物だ。



何故、此処まで邪険にされなければならないのか。



「――――興醒めだ、失せろ」



目の前に広がる殺気にも似た冷気に、心臓が震える。

龍神に脱がされた夜着を震える手で手繰り寄せ、袖を通し、逃げるように部屋を後にした。



禊の後日、いよいよ初夜。

これで妊娠すれば全てが終わる、終わらせたい。

そんな気張る気持ちをよそに、身体がガタガタと震えだしたのだ。

緊張からくる物かと思ったが、身体に伸し掛る重力、気だるさ、節々の痛み。



――――風邪だ。



しかも重度の。

おまけに咳こんだら、目の前の麗人は眉を寄せ、さも鬱陶しそうに先ほどの言葉を吐いたのだ。



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