神様と愛語



よたよたと覚束無い足取りで部屋に辿り着く。


薄く硬い布団の上に倒れこんだ。



「ごほっ、けほ、ごほごほっ……――――っ」



苦しい、悲しい、寂しい。

――――寒い。

体がガタガタと激しく震えだす。



「ぅう、寒い」



先ほどの龍神の瞳を思い出し、更に震えを煽られる。

生きている心地がしない。

常に誰かに疎まれ、存在を否定されるかのような目で見られる。

身体が寒さと熱で震える。

カタカタと歯が鳴り、ギシギシと関節が軋む。



苦しい。

逃げ出せるものなら今すぐにでも逃げ出したい。

でも逃げ出したら、自分の生死どころか家族の安否すら怪しくなる。

八方塞がり状態に、手も足も出ない。



「はぁ、……はぁ……。ふ、ふ、ふぅ……」



息が漏れる。

頭が痛くなってきた。

風邪の時はマイナス志向に陥りやすい。

なぜ、どうしてこんなめに、と脳内でぐるぐると文字が躍る。



「げほ、ごほっ! うぅう、たすけて」



誰に向けての助けなのか、勝手に零れた音は狭い部屋の角に吸い込まれる。

その夜は、震える身体を抱きしめ、薄い布団に身を寄せるようにして眠りに就いたのだった。


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