神様と愛語


「先程は若様が無礼を働きました事、お詫び申し上げます」



麗から客間にと呼ばれ待っていると、先程の少年と男が現れた。

黄金の質量ある座椅子と座布団の上に胡座を掻く少年と、正座をし、頭を下げる男。

これでなんとなく事を理解する。



「い、いえ、気にしておりません」

「左様ですか」



波津と呼ばれていた男は頭を上げると鋭利な瞳を此方に向けた。



「緋蛇蛟八幡神(ひじゃみずちはちまんしん)様に御座せられます」

「緋蛇と呼んでくれて構わんぞ」

「若様、話が終わるまで口を閉ざしてください」

「ああ、すまぬ」



何がそんなにも愉快なのか、緋蛇は頬を緩ませ此方を見る。

視線から逃れるように波津に目を向ければ咳払いをし、仕切り直しと言わんばかりに先ほどと同じように鋭利な瞳を寄越す。



「蛇神であられる桜蛇蛟八幡神(おうじゃみずちはちまんしん)様の御子息で御座せられます。龍神、雨龍夜刃神様とは血縁関係に御座います」

「は、はぁ」

「先日、危ない所を助けて頂いたとの事。感謝奉ります」

「あ、あの、お話の途中遮る事をお許し下さい。……申し訳御座いません、わたくしに緋蛇様を助けたと言う記憶は御座いません。ひ、人違いではありませんでしょうか」



心臓が不自然なくらい、ばくばくと音を立てた。

言ってから後悔する。

神様に口答えしてしまった、と言う恐ろしい程の後悔。

正座した膝下で組んでいた手がじっとりと汗ばんで行くのを感じる。

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