神様と愛語
人間の代わりはいくらでもいるから邪険に扱ってもいいと?
人間にしか子供は作れない癖に、偉そうに!
お願いされるならまだしも、産める事を光栄に思え?
馬鹿馬鹿しい。
あんな非道な神の子を授かるなんて逆に迷惑だ。
迷惑……、いや、生まれてくる子供には何の罪もない。
人間の細胞を神の細胞が食いつぶすとしても、生まれてくる子供は私の子供。
……その子はどうなるんだろう。
神として育てられるのは分かるけど、母親の愛情なしに育てるのかな。
その子を置いて人間界に帰るの?
そもそもそれはどうなの。
子供を捨てて人間界に行けって?
どくん、と心臓が脈を打った。
そうだ、今まで簡単に産んで人間界に帰ろうって口癖の様に心の中で唱えてきたけど。
それって子供を置いていくって事だ。
今更気づくこの事態に、涙が出そうになる。
なんて酷いことを。
心のど真ん中に降ってきたその事実を、私はどうしても受け入れることが出来なかった。
そしてその夜、タイミング悪く二回目の情交。
心の整理が着かないまま、真っ白い夜具に身を包み、布団の上で正座をして神を待つ。
緊張で手が震え、心臓は早鐘を打つ。
そして音も立てず襖を開け、入ってきたのは月明かりに照らされて神々しく光る麗人。
龍神だ。
「っ」
息を呑む。
龍神は私に一瞥くれるとゆっくりと中に入り、襖を閉める。
一つ一つの動作に体が震えそうになるのを必死に絶え、準備を始めた龍神の背中に向けて声を上げる。
「あ、あの」
「…………」
背中は何も語らない。
「ひ、ひとつ、お伺いしても宜しいでしょうか」
目の前の動きが止まる。
「子供、を産んだ後……、わ、私がその子を育てることは、出きるのでしょうか」
息が上手く吸えない。
もう龍神の背中さえ見れなくなり、目の前の真っ白い布団を視界に入れるので精一杯。