神様と愛語
動く気配が感じ目の前の布団に影が落ちる。
視線を上げれば、そこには恐ろしく美しい龍神の顔。
「育てる、だと」
感情の読めない綺麗な色をした瞳。
「人間如きが神の子を育てるなど、冗談のつもりか。貴様、俺を愚弄する気か」
言葉を発する間、眉一つ動かさない。
なのにそこに秘められた怒気のようなものに、背筋が凍る。
「貴様が子に何を思うが勝手だ。用が済んだら元居た場所に帰れ」
言葉に体を貫かれ、硬直する。
なんて言う言葉の暴力だろう。
子の未来を案じ、涙が出そうになるの唇をかみ締めて堪える。
「……人間は俺の機嫌を損ねるのがすこぶる上手い。興醒めだ、失せろ」
美しい瞳がわずかに細められ、初夜の時と同じ台詞を投げつけられる。
あの時と違うのは夜具を脱がされていないと言うことだ。
龍神の迫力に足元は震えていたがなんとか立ち上がり、早足で部屋を後にする。
――――美しく恐ろしい怪物。
神になんて言い草だと、清蓮が聞いたら発狂し、3時間はお説教と神とは何かについて語られそうだ。
走っていないのに息が上がる。
頬には堪えきれず零れた涙がゆっくりと伝っていった。