神様と愛語
「お前、動けないの? 大丈夫?」
言葉が分からないと知りつつ声をかけると、人間の気配に気づいたのか、蛇がぐにゃり、と顔だけ此方に向ける。
そして警戒するように、シャァァ、と口を開け、舌を出した。
「あはっ、可愛い」
女子ならば爬虫類に抵抗を持つものだが、私はどちらかと言えば好意を持っている。
毒がなければ問題はない。
未だに警戒して此方を赤い目でじっと見続けている蛇に、微笑む。
触りたいが、警戒されていては手が出せない。
「待ってて、石退けて上げる」
蛇の尾を踏んでいる石に近づくと、危害を加えると思ったのか小さな蛇は先ほどよりもウネウネと必死に身体を動かし、前進しようと試み始めた。
「ん、……重いんですけど、これ」
ぐっと力を込めて石を押すが、びくともしない。
見た目は女が持ち上げられそうな石の大きさだが、どうやら見た目に反して質量があるらしい。
「んぐぐぐぐっ! ……うっ、ご、けぇ!」
暫く石と私の力比べの様になっていた。
蛇も動く事に疲れたのか、それとも人間がしている行動が面白いのか、じっと此方を見つめている。
「こっのぉお!」
最大級の力を込めて石を押す。
すると、願いが通じたのか石が負けたのか、どちらにせよ、重い腰を上げた。
ずずっ、と隙間が開く。