神様と愛語
「お待たせ致しました」
着替えている間に翠香が清蓮を宥めたのだろう。
気持ちの切り替えがすんだのか、先ほどよりも解れた(と言ってもまだ怖い)顔が告げる。
「1時間の禊を行う」
「――――っ!」
息を飲む。
そんな長期時間この滝に打たれなければいけないのか。
先刻、落ちてくる滝のしぶきに触れたが、それはそれは冷たい温度をしていた。
その寒冷な水に1時間?
禊終える前に、死ぬんじゃないだろうか。
「さぁ、早く滝に行っておいで」
にっこり、と翠香に微笑まれる。
悪魔の笑みの様にすら感じられる。
喉元が上下し、唾液を飲み込む。
心臓が水の冷たさを想像し、ドッドッ、と不規則に跳ねた。
唇を結び、踏み出す。
―――――拒否権など、存在しない。